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「国松、あんたにご指名が入ったよ」
「お断り下さいませ」
「そうかいそうかい、相手は川喜田様なんだけどねェ……」
その名前を聞いた瞬間に全身の毛が逆立ち心は喜びに満たされるのだった。川喜田様に会える。それだけで満足だった。
「それでなんだけどね、今日はここじゃなくて呼び出しなんだよ」
「呼び出しでございますか」
「そうだよ、態々使いの者を出してまであんたを指名しに来たんだよ。場所は江戸城だよ。川喜田様もここに来るような暇が無いぐらいに仕事が忙しいのかねェ」
「これでいつお城に行けば」
「駕籠で迎えに来ると思ったんだけどねェ、この辺りの事は言わなかったから夕方ぐらいに城に行きな。あ、間違っても大手門から入ろうなんて考えるんじゃないよ。裏門から目立たないように行くんだよ。いいね?」
「承知しております」
夕日が江戸の街を照らし江戸全てが燃えるように赤くなった頃、私は江戸城の裏門に向かって歩いていた。川喜田に会えるそれだけで心は踊り足取りも軽くなるというものであった。裏門に着くと番方の屈強そうな侍に用向きを聞かれた。
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