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「お前のよく知っとる奴だよ。川喜田剣之介」 全身に鳥肌が立った。川喜田とあの人買いが接触をしていて、私の話を聞いていた。一体どう言う事なのだろうか。 「唐突な話なのだが儂は川喜田は好かん。多摩の田舎道場の出で祖父が剣術指南役を大道芸で手に入れた事が気にくわんのじゃ、そのおこぼれに預かってるだけのぼんくら程度にしか思っておらんよ」 確かに種子島の銃弾を刀で切り払ったと言う話は凄いとは思うが大道芸と言われると否定は出来なかった。 「それにこの前お主をああしたのもあいつに対する嫌がらせのつもりだった。お主はあいつの心も体も締め付けておるからの、それを寝取るような真似をすればあいつの心も多少は痛むだろう。そのためだけにお主を抱いたのだ」 こんな下らない事で…… 私は思わず拳を握りしめた。 「だがな、儂もお主を好きになってしまったようだ」 「……」 何も言えなかった。興味がないどころかむしろ嫌いな方の人間から言われた告白故に迷惑すら感じていた。 「それはともかく、ここからは幕府の機密中の機密になるのだがな。お主の村は幕府と揉めておった事は知っておるな」 「はい、川喜田様より聞いております」 「ははは、矢張りあいつは最低だのう」 「最低、と言うのは」 「幕府はあの村を手に入れたかったので、剣客を集めて山賊の格好をさせたのだよ。そしてその剣客達に村を攻めさせたのだ。お主の村は山賊に滅ぼされたのではなく、幕府に滅ぼされたのだ!」 驚天動地であった。今の今まで恨み続けた山賊が実は幕府だった事による動揺は全身を震えさせた。 「剣客を集めただけあって皆ゴミのように人を斬ったと聞く。その中の剣客隊の中におったのが川喜田だ。川喜田自身も相当人を叩き斬ったそうな」 「そんな……」 「川喜田は卑怯者だから女子供を中心に斬ったらしいぞ、その中にもお主の母と姉が混ざっておったのかもしれんな」 「信じられませぬ」 黒川は机の引き出しから一枚の紙を出した。その紙は傘連判状であった。
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