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柱時計が午前零時の鐘を鳴らした。
今宵は「シンデレラ会」と銘打った晩餐会。少し特殊なこの晩餐会は各国の御嬢様たちが美しいドレスを着飾り、王子扮するイケメンたちと踊ったり食事を楽しんだりするものだ。
そして、それは午前零時まで。一晩だけの夢のひととき。
「お開きよー」
「お疲れ様でしたー」
「さぁ、早く帰りましょ。もう眠いわ」
御嬢様たちが口々に言う。そんな彼女たちには各々、執事たちが付いている。
「御嬢様、馬車のご準備が出来ております」
「あちらの御嬢様がご一緒にと申しておりますが、いかがなさいますか?」
「こちらも馬車の準備が整っております」
私はそんな皆の姿をチラ見して、深い溜め息をついた。晩餐会の最中こそ皆とワイワイ楽しんでいたものの、終わると一人。そう、私に友達はいない。ドレスも私だけ真っ黒のゴシックスタイル。さながら、醜いアヒルの子と言ったところか。
「御嬢様。我々も帰りましょう。馬車がお待ちです」
私の執事だ。優しげな表情を浮かべている。彼に裏表は、ない。きっと、きっと私の事を可哀想な御嬢様だとか思っていない、はず。私には彼がついている。彼を信頼している。
「歩いて帰るわ!」
なのに、つい反抗的な態度を取ってしまう。
「わかりました。お供します」
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