夜と朝の隙間の時間が、いろいろと一番辛い。

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夜と朝の隙間の時間が、いろいろと一番辛い。

遠い街に住む彼女から、今日中にかけると言われた電話を待つ。 内容は知らない。 もしかしたら別れ話かもしれない。 平然とそう考えるくらい、最近は疎遠になっていた。 夜はもう十分すぎるほどに更けた。 日付がいつの間にか変わっていて、今までで一番早く日めくりカレンダーを破った。 ボリュームを絞った安いスピーカーから、好きでもない音楽を垂れ流す。 彼女がジャケ買いしたCDの曲だ。いらないからあげる、という一言とともに、二ヶ月前に貰った。 世の中に対する不満が滲み出たボーカル。 自分でも弾けそうなくらい簡単なコード進行のギター。 覇気のないドラム。 緩々のベース。 何でメジャーデビューできたのか、全くもって理解不能。そう思うほど、下手くそでありきたりな歌だった。 まあボーカルだけは嫌いじゃないけど。 だから、何となく、延々と聴いてしまうのだ。 今日は特に何もしていないはずなのに、何故か頭が悲鳴を上げている。 馬鹿なりに体力はあるつもりだったが、流石に徹夜のしすぎかもしれない。 ちゃぶ台に広がる大学のレポートと課題。提出日は確か明後日だった気がする。 バイトから帰った後、とりあえず取り掛かったは良いものの、進める手は長い間止まったままだ。 床に胡座をかいていたせいで、足が痛い。 凝った背中を伸ばして天井を見上げる。 「ん……」 ふと目に入った小学生の時から変わらないシミを、少しの間見つめた。 このシミも、馬鹿な自分も、部屋から見える夜景も。 昔から、何も変わっていなかった。 ふと思い立って、冷えたチューハイを取りに部屋を出る。 廊下に続くドアを開けて、煌々と明るいのが自分の部屋だけだったことに気がついた。 家中真っ暗、窓の外も真っ暗。真夜中なのだから当然か。 いつもと違って見える家を、ぺたぺたと裸足で歩く。 暑くもなく寒くもない夜だった。 ここのところ熱帯夜が続いていたが、ようやく秋の気配がするようになったか。 台所に入り、取っ手の黄ばんだ冷蔵庫を開ける。夜食になりそうな菓子やつまみがたくさん入っていた。 ただ、今は腹は減っていないのでそいつらに用はない。 奥に転がる缶チューハイを出そうとして、思い直して手前に立っていたコーラを引っ掴む。 電話がかかってきたときにあまり酔っているのも良くないと思った。
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