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「俺に構うな――」
そうだ、頼むから放っておいてくれ。
寂れた町の片隅で、それに似合いの寂れた生涯。
生きることの意味も気力も失ったままに、ただ罰として生を受け輪廻転生を繰り返すだけの延々。
「これは俺が受けた罰だ、お前らには関係ねえって何度もそう言ったろ?」
いい加減迷惑なんだ。付きまとわずにさっさと俺の前から消えてくれ――
さすがにそこまでは言葉に出せずに、だが男の方はそんなことも含めてすべてが分かっているというふうな調子で瞳をゆるめてみせた。
「お前さんこそしつこいよ。俺らは共にあってこそ何ぼの仲じゃないかい? お前の受けた罰なら俺らも同然さ。何度も同じこと言わせるんじゃないよ。それよりお前さんに朗報だ。【紫燕】の居場所が分かったんだよ」
その言葉に無気力だった瞳がカッと見開かれた。
指先に絡めたままの雑草が、恵みの雨を求めんとばかりに更に根強く天を仰ぐ――
夜の闇を遮って覆い隠すほどの荒れた曇天を突き破り、この草々のように強くたくましく生を営むことができるだろうか。
その昔、そうであったようにもう一度、希望を持ってこの生を全うすることができるだろうか。
- 結 -
次エピソード、『破天』です。
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