206人が本棚に入れています
本棚に追加
痛恨に満ちた駿鬼の激情が、四凶の魂を食い破り、魔界を揺るがす波動となって、地上界を目指していた。
もしもお前の信じていた友が、お前の一等大事な相手を穢したとしたら、それでもお前は平気な顔をしていられるか?
それでも仲間を信じ、仲間に感謝するなどと悠長なことをほざいてはいられないだろう。
それが人間なのだ。それが本来の姿なのだ。
どんなに友情を繕おうと、そんなものは目の前の些細な憎しみ如何によって、いくらでも醜いものへと変貌をとげる。
だからせいぜい憎しみ合うがいい。そして醜い争いを繰り返し、偽善で覆い尽くした仮面を剥がし合い、ののしり合うといい。
不老不死の立場を捨てて、かくも短い一度の生涯を選んだ偽善者共に、この上ない後悔と苦渋を与えてやろう――
◇ ◇ ◇
駿鬼のねじれた恨みがどす黒い怨念となって、もうすぐ彼らを呑みこむだろう。
悪戯な運命に惑わされて尚、互いを信じ、互いを許し、そして互いの絆を深め合っていけるだろうか。
帝雀、剛准、白啓、遼玄、紫燕、強くやさしくたくましい我が弟子たちよ――
例えばお前たちの身の上にどんなに酷な運命が降りかかってきたにせよ、それが自らの選んだ道である以上、最期の瞬間まで抗うことを諦めるな。そしてただただ己を信じ、互いを信じて突き進むがいい。
我らはいつでもお前たちを見守っている。
お前たちの行く末を、片時も忘れずに見守っていてやるから。
その命の尽きる、最期のその時に、これが自分たちの生き様なのだというものを堂々と我らに示せるよう、胸を張って生き抜くがいい――
鏡面の中で揺れ始めたそれぞれの行く末を案じながら、赤龍ら神界五大神は、皆一様の思いで花吹雪の舞う下界に思いを馳せた。
- 結 -
最初のコメントを投稿しよう!