月砕

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「……ったく、あんたらのお陰でこっちまでお尋ねモンだぜ……」  ゼィゼィと息を切らしながら男は遼玄らを見上げてそう言った。迷惑そうなその言葉の割には何故か楽しげともいうべきか、わずかに口元がほころんで、薄い笑みまでが垣間見えるのは錯覚だろうか。帝雀や白啓、剛准らも彼のそんな様子を前に不思議そうに首を傾げてみせた。  だがまあ、こんな所で大の男が五人も揃って野宿をするわけにもいかないだろうし、ともかくは賭場の関係の人間が自分たちの所在を嗅ぎ付けない内に街を出た方が賢明なのは言うまでもないだろう。帝雀の提案で、一同は紫燕らしき男と連れ立って、この先の街で宿を探すことにした。 - 結 - 次エピソード、『残月』です。
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