破天(遼玄の回想)

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 その頃、俺たちの住むこの星は五階層から成る平和な世界だった。神界を頂点とし、天上界―地上界―地底界、そして邪悪の吹き溜まりとされる魔界までもが保たれ調和の取れたひとつの惑星。神界を治める守護神である五人の神、【黄龍、黒龍、赤龍、蒼龍、白龍】と呼ばれる【五龍(ごりゅう)】の絶大な力によって平和を保っていたこの星に、巨大隕石が衝突をするという事変が起こったあの時から、俺たちの運命は目まぐるしく動き始めたんだ。  予期もしていなかった天変地異によって、魔界に永眠していた四つの獣が目覚めてしまったのが万事の発端だった。それらは【四凶(しきょう)】と呼ばれ、この惑星に於いて最も邪悪とされた獣だった。  隕石衝突時のエネルギーによって凶暴化した獣たちは、彼らの眠っていた魔界を食い破り、地底界を突き抜けて、人間の住む地上界までをあっという間に食らい尽くした。  事態を重く見た守護神五龍らは、ひとまず生存が確認される地上界の人間たちすべてを亜空間へと移動させると、猛獣を討伐する為の組織を結成した。  それら討伐軍が天上界に住む俺たちの中から選ばれるという決定が伝えられたのはそれから間もなくしてのことだった。  魔界より蘇りし【四凶(しきょう)の獣】、それらを討伐する為に選ばれた者たちには神としての立場が与えられる上、神界にて不老不死となることが約束されるという噂に、天上界はしばしざわめきに包まれたのを鮮明に覚えている。  自らが神になれるかも知れないということに色めき立つ者、相反してそんな危険な任務は絶対にご免だと身を隠す者等様々で、天上人にとっては一時心の休まる暇もなかったというのが実のところだった。
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