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破天(遼玄の回想)
「とにかく帰ろう遼二。【白啓】と【剛准】もお前さんを待ってる」
着物の裾をパタパタとはたきながらそう微笑むのは、長いこと連れ添ってきた仲間の一人である【帝雀】という男だ。彼にうながされるままに逸る気持ちを抑えて立ち上がり、その後をついて歩き出す。前を行く彼の後ろ姿を見つめながら、遼二と呼ばれた男は自らの過去を思い起こしていた。
◇ ◇ ◇
*遼玄の回想*
そう、あれはいつのことだったろう、俺たちの運命を一瞬で変えてしまった衝撃の出来事。
――頃は今からさかのぼること幾年月になるだろうか、あまりにも永い苦悩の時間の中に於いては、曖昧にしか覚えてはいない。
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