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トイレ
「はぁはぁっ…!」
清々しい太陽の直下で俺は今、額に汗を浮かべながら小走りに歩いている。
この汗の原因が暑いだけが理由ではないのはわかっている。
全力で走りたいところではあるが今はそうできないのが現状である。
そうこう思考している間に自宅のアパートまで100m圏内まで来た。
前方に見えるあの角を曲がった先に俺の帰るべき場所がある。
右腰に付けてあるキーケースに手を伸ばし、入っている自宅の鍵を取り出しておく。
すぐに開けられるように上下の向きもしっかりと合わせる。
そして俺は1階の104号室へと帰って来た。
鍵穴にキーをゼロ摩擦で入れ、キーを回し、抜き取るまで0.34秒。
ドアノブを回し、家に入り、靴を脱いで一歩目を踏み入れるまで1.67秒。
背負っていたカバン下ろし、床に置くまで0.29秒。
そして到達点であり、今の俺を救ってくれるであろう唯一の楽園ともいえる場所へと向かう。
『トイレ』だ。
率直に説明をすると俺は今、お腹を壊している。
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