トイレ

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「なんとなくそうじゃないかとは思っていましたが…」 『ほう?あまり驚かないのだな?』 神が俺に対して感心の表情を向ける。 驚いてはいる。トイレのドアの向こうが異世界に通じているなんて思いもしない。 寝ぼけてるわけでもないこの実状でそれを受け入れる程には冷静でいたつもりだ。 先程までは危機迫っていたけどね。 「帰ることはできますか?」 『なんだお主、戻りたいのか?』 「えぇ、まぁ、普通に…」 釈然としない答えを返してしまった。 日々の憂鬱な事を振り返るとバツが悪く頭を掻きながら周りを見渡す。 本当に見知らぬ森の中だ。 あの化け物が現れたのも納得だ。 『戻すことは簡単だ。だが成らん』 「ならんって…なぜですか?」 可という答えにも関わらず不という理不尽な答えが返って来る。 『我が神の頼みを聞き届けた暁には、お主の願いを叶えてやろう』 願いを叶える。 まるで神様のような、いや、神様なんだけど、現代ではなかなか聞けない言葉だから少し魅力的に思えた。 「願い事、ですか」 『そうだ。しかし今のお主では荷が重いであろう。力を授ける。何が欲しい?』 力を授ける。何が欲しい。 何その反則的な誘い文句。 悩むに決まってる。というか悩んでる。考えてる。何が欲しいかを全力で。 考えている俺を尻目に腕を組んで仁王立ちをしている神様はとても眩しく見えた。黄金だし。
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