「一番怖い話を、聞いて貰えませんか…」

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「送ってはいるんですが、戻って来ちゃうんです。メルアド間違ってないですか?」 そんな筈はと先生は首を傾げた。携帯をつき合わせて確認するが、アドレスは間違ってはいない。私は先生の目の前でメールを送信してみせたが、やはり受信者不在で戻って来てしまう。こちらの携帯の故障かと思い、院長先生の携帯にメールしてみると、そちらはキチンと着信のアラームが鳴る。 「おかしいねえ。判った。それなら俺が直接伝達するから、籠さんの都合のいい日を教えてよ」 こうした奇妙な手順を経ながら、私はH美さんと逢う事となった。 落ち合う場所は彼女の家からほど近い、都内A区のサイゼリヤ。待ち合わせ時刻はランチタイムで賑わう、お昼の十二時頃であった。 H美さんに関する二つ目の奇妙な出来事は、お会いする算段が整ったら、携帯のメールが普通に届くようになった事だ。ただ、私はこの時点では、このメールの着信の不具合が、単なる機械的な問題なのだろうと、あまり気にも留めていなかった。 H美さんは、30代の女性。現在は専業主婦という事であった。 店員に案内され、窓際の明るいボックス席に着くと、簡単な自己紹介をして、ノートとペンを片手に、体験談の聞き取りに入る。 他の怪談執筆者の方は、どの様な聞き取り方法をされているのだろう。私は過去に自身が経験した不可思議な体験談をお話したり、撮影した奇妙な写真を提示して水を向ける。すると大抵の方は固さが取れて、少しずつ、ご自分の体験談を語り始めてくれる。
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