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 ああ疲れた。もうなにもしたくない。可愛らしい制服を脱ぎ捨てれば、そこには『テーマパークのお姉さん』ではなく、疲れた顔をした自分がいた。  愛想笑いで引きつった頬は、ぴくぴくと痙攣を起こしている。  何が楽しくて働くかと問われれば、それは無論、生きるためだ。お金がなければ生きていけない。仕方がない事だとわかってはいるものの、明日もまた行かなければならないと思うと、やはり嫌気がさす。  私はちっとも意識の高い人間ではないため、会社への忠誠心は、あくまで見せかけだけのものしか持ち合わせていない。一人でどうにか生きていけるお金をもらえるなら、なんだって良かった。  そんな私にも、唯一の楽しみがあった。ハンドメイド作品を眺めることだ。特に気に入っているのは、樹脂で作られた精巧なおもちゃである。指の腹に乗るようなほど小さなそれは、スイーツだったり、料理だったり、家具だったりと様々だ。  中でも「かなっぺ」という作家の作品が特に好きだった。作品ひとつひとつのクオリティが桁違いに高く、実物をそのまま縮小したのではないかとおもえるほど、再現度が高かった。思わず食べられるのではないかと思えるほど精巧なそれらを、実は何度か口の中に入れた事があった。
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