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二人を乗せたアルが王城の見える場所に降り立つ。凱旋以来のこの地の訪れにやや感慨深く、何事もなければ思いに浸りたいくらいであった。
「じゃあ行ってくるからリーザとアルは待っててくれ」
セプトはそう言い残すと急いで王都に向かった。途中馬小屋に立ち寄り、馬車に乗せてもらう。
整備されていない道を通るため乗り心地はあまり良いとは言えないが、それでも歩くよりは早い。
王都が近づくにつれ、人々が増え始めた。交易の商人や他国の使者などは昔から多いが、やたらと民衆が多い。
セプトは馬車から降ろしてもらい、そぞろ歩く人々の噂話を聞いていた。
「王の秘宝を盗んだんだ死罪だろうよ」
「いやいや、なんでも勇者のパーティーメンバーだから減免て噂だ」
皆が皆そんな噂に沸いていた。
人通りが増えていくと、その先に一段と人だかりができている。さらに進むと見せ物用なのか高い台が作られ、太い縄を首に括られた男が立っていた。
「ジン!」
容貌にちょっとした変化はあるものの、面影は良く残っている。セプトは人を掻き分け掻き分けジンのいる台へと向かう。
「セ、セプトか……頼む、助けてくれ」
ジンはかつての信頼を置いた仲間の姿を目にし救援を願い出た。だいぶ痛めつけられたようで、呼吸も荒く、所々に痣も見受けられる。
だが、セプトが返事をする前に観衆に大歓声が沸き起こった。どうやら王がこの場に来訪したらしい。
王はディーン率いる近衛隊に守られながらジンのくくりつけられた台へと到着した。
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