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「目録も隅々まで何度何度も見たけど、秘宝は書いてなかったわ。そうして王様に彼は嘘をついてないし、無実だって言い続けていたら……」
やや興奮気味に話していたシーズの言葉がピタッと止まる。よほど悔しい思いをしたようで、涙は流れていても目に籠もる力強さと歯を食いしばってワナワナ震える様から窺えた。
「盗賊に加担するエセ司祭と烙印を押されて……私が魔王討伐の報酬で建ててもらった孤児院と教会は没収、民を惑わす新興宗教の教祖であると王都を追い出されることになったの」
シーズは話し終えるとひたすら泣きじゃくった。ジンを救えない悔しさと自らを追放した怒りがとめどない涙を流させ続けた。
「話はわかった、僕が王様に掛け合ってこよう。そうだ、ディーンとリーザにも力を貸して貰おう」
ディーンもリーザも魔王討伐の冒険の仲間であり、聖騎士ディーンは王の近衛隊の隊長として常に傍らに付き従っているし、魔法使いリーザも宮廷魔導師として城に出仕しているはずであった。
「はっきり言って期待はできないわ。ディーンは王様の腰巾着だし、リーザはあの頃のような熱意などなくて、今回だって手助けを依頼したのに日和ってたし」
「まあ声を掛けるだけはしてみるよ。君は王都追放なら一緒には行けないし、留守番しててくれるかい?風呂も着るものも好きに使ってくれて構わないから」
リーザは顔を横に振る。
「私も行くわ。なんとしてもジンを助けたいし、何より指を加えて見てるなんてできない」
「わかった。けど、王都に入って下手に騒ぎになるのは不味いから、外でアルと待っててくれるか?」
リーザは頷くとセプトを急かし、王都へ向かうべく神鳥アルを呼ばせた。
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