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と、いったつもりの声が、かぁーっと、ただ息の抜ける弱々しい音になって自分の耳に聞こえた。
息がもどり、やがて痛みも遠ざかると、静まりかえった闇のなかで、ジーっと地虫の啼く声だけが聞こえている。
なんだまだ夜中か自分は寝ていた夢を見ていた、せっかくあの夢だったのに。
苦笑いしてほっと息を吐き、痛んだ頭をさすろうとした自分の手が、どこにあるのかわからない。全身が重く痺れているといったふうで、体の感覚がなにもない。まるで目玉がついた丸太ん棒にでも化けたようだった。
どうにも寸とも動かない腕を、それでも持ちあげようとしたとたん、今度は肘に激痛が走った。
あががが。(痛ててて)
動かそうとすれば体の節々はギリリと軋み、関節を逆さまにへし折られるような激痛が走った。醒めるにつれて、首や肩、背中に腰と、体中のあちらこちらがひどく痛みだした。
(此れぇ何事なとーが!)
呂律がまわらずもごもごとして、言葉にならない呻き声が自分のものではないような、奇妙な感じがした。わけもわからず暗闇のなかに横たわったまま、次郎は目玉だけをぎょろぎょろと動かした。
(鶴!)
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