第一章 醒

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 酔って喧嘩でもしたか、いや、あれは……。鶴、そうそう鶴がどうやら身ごもったようだと知らされたのだ、鶴の不快は子ができたのにまちがいなかろうと。そうだそうだ、それから祝いだ祝いだと徳や照たちが集まってくれて、樽兄ぃが酒を持って来てくれて、夜どおしみんなで飲んで歌って、それから……。  そう、気がついたら朝になっていて、なんだか村中が祭りの前の日みたいに騒々しくて、いくらなんでも村をあげて騒ぐほどのことでもないと、それは赤子が生まれてからにしてくれと、ちょっと気恥ずかしくおもっていたら、むかいの盛おじぃが飛び込んできて、なにをしておるおまえら馬鹿か知らんのんか、御冠船(うかんしん)ぬ来ちょんでぃど、魂ぬ抜げるか大ぎさんでぃど、今から行列ぬあんでぃど、早く行かんと見逃すんど、といって、それから……。  あ。  次郎はおもいだした。     
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