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目の下には青いクマ。
「何しに来たの」
「メールの返事、ないから」
「メール?」
「見てないの」
「この前のミネラル展で、珍しいのが売れて、買ったヒトがツイートして、問い合わせが大変なことになっててさ……全然見れてない。あのさ、暑いから中入って、戸閉めてくれる?」
私は慌てて、玄関の中へ入る。
エアコンの風なのか、涼しい空気にほっとする。
晶の後ろからついていくと、茶の間に通された。
古びた花柄のローテーブルに、銀色のノートPCが載っている。
「未読がまだ60通あって」
晶は私に座布団を渡すと、頭を掻きながらPCの前に座った。
「ごめんなさい、突然押しかけて」
「あ、そか……なんの用だっけ、Eメール?」
多分、寝てないのだろう。なんとか瞼を開けている、といった顔をこちらに向ける。
「あの、ここでバイトさせてもらうこと、できないかな」
「バイト? ひとりで足りてるし……なんで? 石、好きなの?」
「石は……特に。私、家にいたくなくて。お金もなくて」
「なんだ、名前がルリだから、好きなんですっていうかと思った。これ返信しちゃうから、ちょっと待ってて」
キーを打つ音と、エアコンの風の音だけがしばらく響いた。
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