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静寂に耐えられないかと思ったけれど、彼が私を放っておいてくれるのが、かえって気楽に感じた。すると、ひんやりした空気と、静かなモーター音、ときどき晶が鼻をくすんと啜る音などがやさしく自分を包み始めた。
ふわふわの羽根布団にくるまれるような時間の流れ。
どんどん意識が遠のいて、私は目を閉じ、座布団の上に丸くなり、眠ってしまった。
「おいっ」
揺り起こされたのはどのくらい経ってからだろう。
体を起こすと、晶は肩にかけた手を離した。
「よかった、生きてた。熱中症で倒れたのかと思った。これ、飲んで」
麦茶のグラスを差し出される。確かに、喉がカラカラで、麦茶は甘露のように甘く喉を潤した。
はあ、と息をついてグラスを返すと、晶は、
「メール返信し終わった。アンタのメールも見た。バイトは雇えないよ、俺は経営者じゃないから。親父が決めることだし、親父はいまカンボジアに行ってる」
「そっか」
私はまだ夢の中にいるような心地で、目をこすりながら頷く。やっぱり考えが浅はかだった。
「でも、遊びに来るだけなら来てもいいよ」
「え?」
「家にいたくないんだろ。ただ、俺は石マニアだからな。石のこと、話しまくるけど、それでもいいなら来ればいいよ」
「ほんと?」
「いいんじゃない、別に」
PCの前に座りなおしながら、こちらを見ずに晶は言った。
「ありがとう!」
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