ラピスラズリ

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 最初は怖い人だと思ったけど、案外話の分かるいい人だ。この茶の間もどこか懐かしくていい雰囲気だし。   「夜遅くはダメだぞ。この前みたいに。そうだ、あのとき、見せられなかったけど」  晶は、店のドアを開けてカーテンの裏に消えた。1分も立たずに戻ってくると、小さな箱を手にしていた。 「これがラピスラズリ。日本名が『瑠璃』だよ」  平たい、ひし形の石。角はつるりと丸みがある。深い深いブルーの中に、よく見ると金色の細かな点が薄い筋になって流れていた。 「夜空みたい」    彼が、そっと掌に石を載せてくれる。 「この金色の部分がちょうど天の川みたいだよな」 「うん、きれい」  私の一言に気をよくしたのか、彼は本当に薀蓄を語り始めた。  ラピスラズリは青いラズライトという鉱物に、何種類かの鉱物が混じりあっている。その繊細な混入加減で、奥行きのある色柄になるのだとか。  高級画材としてかつてはフェルメールが使い、スピリチュアルな人たちにはチャクラが開く石だと言われているそうだ。  次から次へ鉱石を見せてもらっていると、PCにまたメールが何通か届いた。  晶はそれに返信し、注文を受けると在庫を確認し、またメールする。     
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