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宅急便のスタッフが発送する商品を受け取りにくると、伝票を預かり、その番号を打ち込んでまたメールを送り、在庫管理の画面の残数を更新する。
私は手伝うと言ったけれど、
「いいよ」
と言われてしまい、忙しそうにする彼をぼんやりと見ていた。
冷凍食品のチャーハンを分けてもらって遅い昼食を済ませながら、
「毎日、こんな風?」
と尋ねた。
「催事のないときは」
とチャーハンを飲み込みながら彼が言う。
「サイジ?」
「この前のミネラル展みたいなやつ。親父がいれば、それも親父が行って、俺は家にいる」
「ひきこもりだね」
そう笑うと、彼は口をへの字に曲げた。
「ひきこもりです」
「え、本当に? 学校に行きたくなかったってこと?」
「くだらねーよ、学校なんて。別に友達もいらなかったし。意味ないから行くのやめた」
私は改めて部屋を見回した。テレビの横のカラーボックスに、鉱物関係、地学関係のいかめしい本が並んでいる。写真付きの図鑑は、床に平積みになっていた。
「こういうので勉強してるの?」
「それは全部読んだ。あと、ネット上で論文読めるし、世界情勢も分かるし」
「論文?」
「こういうやつ」
もぐもぐ口を動かしながら、マウスでBookMarkをクリックする。
びっしりと書かれた英語と数字の文章が、表示される。
「これ、何が書いてあるの」
「モンゴルのレアメタルについて」
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