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英語読めるの、というのは愚問だろう。
「勉強して、大学へ行くの?」
「うーん、まだ決めてない。でも、俺はいろんな石の魅力を伝えるこの仕事の方が好きだな」
「えらいなあ」
「えらくねーし。おまえはないのか、勉強したいこととか、夢とか」
「夢は……昔は、あった」
「何」
真っ直ぐに聞かれて、思わず、
「探検家」
と答えてしまった。
晶は、きょとんとした顔で、スプーンを置いた。
笑われるのかな、やっぱり、と覚悟した私の耳に届いたのは、
「何、探すの?」
という質問だった。
ふわっと、風でドアが開いたような感じがあった。探検で、何を探すか。
「何を探すとか、考えてなかった」
そう答えると、晶はぶっ、とチャーハンを吹き出した。
「おまえ、それじゃダメだろ。探すものがあってこその探検家なんだから」
そして口をティッシュで拭いながら、
「でも、いい夢だな」
と笑った。
結局、その日は蜩が鳴き始める夕方まで、晶の家にいた。
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