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瑠璃色の秘密基地
「ここ、秘密基地のことね」
滑り台の真下を、私たちの基地にしたのは、何年前のことだろう?
私たちは頬に泥をつけて、階段の下から夕日を透かし見た。
扉もない。
椅子も机も、地下室もない。
でも、「ここ秘密基地のことね」というだけで、そこは特別な場所に変わる。
そんな魔法を、小さいころは持っていた。
◇
「ルリ、どうだった?」
隣のクラスの唯香が、教室の外で待っててくれた。
二人で校庭を横切り、講堂の前の階段でお昼を食べるのが私たちの習慣。
今は一学期の期末テスト中。
高2になってから、試験は悉くぼろぼろだ。
全国統一模試でも出た化学の問題。そんなにレベルが高くないはずなのに、アボガドロ定数が出た時点で、お手上げになってしまうのは正直ヤバい。
ヤバいのはわかってるんだけど、なんというか興味を持てない。
「わかるー」
昼休み、愚痴を聞いてくれた唯香が笑う。
ピンクのお弁当箱が、今日も小さい。
彼女も成績はずっとそこそこ。このまま行くと、都内の三流私立大学か専門を受ける。その先はというと、
「なんでもいいから100万貯めて、そのあとは結婚する」だそう。
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