瑠璃色の秘密基地

2/7
前へ
/30ページ
次へ
 私にとって「結婚」は、「アボガドロ定数」と同じくらいピンと来ない言葉。  両親は離婚してるうえ、おばあちゃんもおじいちゃんと離婚することにしたらしい。  只今、弁護士を通して協議中。夏休みに遊びに行くのも(はばか)られる状況。  将来に「結婚」を持ち込む唯香に、危うさを感じる一方、特段の夢のない自分は、スリルさえない。  (小さい頃は、夢、あったなあ)  それは、探検家。  でもなり方が分からない。お金は……クラウドファンディングとか? 年金なんてないだろうから老いた時、困るし。  本音は明日のことだけ考えていたい。  探検家になる、なんて言ったら、きっと質問の応酬になる。  そんなもの、何になるの?  年収低いよ?  結婚とかどうするの?  問い詰められたら、きっと何も答えられなくなってしまう。  頬を赤らめ「間違いでした」と二重線で消す羽目になるだけだ。 「ねえ、明日テスト終わったら水族館行こうよ! この前、パパが招待券くれたの」 「いいね」  唯香のお父さんは、たくさんのビジネスホテルを経営する会社の営業部長。  娘さんに、と取引先が様々なチケットをくれるのだそうだ。 「制服のままでいいよね?」  立ち止まって動けないままの私を嘲笑うように、また、夏が来た。 ◇     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加