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プログレとの出会い
[2.プログレとの出会い]
まずプログレとの出会いは1992年11月頃だと思う。ビル警備の仕事を辞めてニート生活真っ最中だった。(ビル警備→自宅警備へ転属)もともと大好きな映画を観まくって、有り余る時間を過ごしていた。日々家に居ながら「何か自分を変えるチャンスはないのか?」という漠然としたアンテナは張っていた。
当時はパソコンもなくTV、ラジオ、雑誌、新聞ぐらいしか新しく情報を得られる媒体がなかったので、なんとなくそういったものに目を通していたある日、新聞のラジオ番組欄でシンセサイザー特集という番組が組まれていたのが私の目に留まった。シンセサイザーの出会いは沢田研二の[TOKIO]の前奏で聴けるタン タラ タララ(ミファ♯ミ シラファ♯)、 タン タラ タララ・・のフレーズである。同時期の聖子ちゃんの[夏の扉]の前奏も興奮したのを覚えている。
そしてあのYMOの[ライディーン]との衝撃の出会いが、その後の自分の音楽人生の主軸となり40年近くもキーボード、シンセサイザー系の音楽に囲まれて生きることになる。
そのような経緯からシンセサイザーという特集番組が私の知らないアーチストを知れるチャンスだと思い興奮した。
エアチェック(死語)なんて高校生以来の事だ。その時流れたのが、マイク・オールドフィールドのチェーブラーベルズⅡの前半30分部分だった。30分1曲というクラシックに通ずるような曲構成(ノンストップではあるが実際は細かく曲分けされている)、その中に詰まった宝石箱のような煌びやかな音の洪水に衝撃を受けた。
インスト曲というのは退屈なイメージがあるけど、このアルバムは1時間があっとゆう間に過ぎ去ってしまう。マイクは全ての楽器をこなすマルチプレーヤーであり、テクニックよりも印象に残るフレーズ作りや、ミニマルミュージックを進化させた音楽性が特徴である。
そして80~90年代に世界的ヒットを連発させた、プロデューサーのトレヴァー・ホーン(バグルス、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、タトゥ等)がタッグを組み完成させたアルバムだ。ラジオでは前半の30分のみのオンエアーだったので、後半の30分が気になり地元のレンタル店に赴き探したが、新作なので当然なくチューブラーベルズⅠのCDを借りることにした。そのアルバムが世界で指折りの大名盤ということも当時は知らなかった。
実はそのレンタル店は以前アルバイト経験があり店員さんも1人だけ知り合いがいた。その人が「今なにしてるの?」と聞いた。私が無職と答えると「今、人手不足だからバイトしない?」と誘ってくれた事で、半年以上続いたニート生活に終わりを告げることになった。プログレという素晴らしいジャンルに出会って衝撃と感動を頂いた上に、その後31歳までその店で働かせてもらって生活が安定し、プログレCD収集の日々や無料で映画やCDを借りられる天職にありつけた。
新聞のラジオ番組欄の小さな情報を見逃していたら喫茶プログレは100%誕生しなかったであろう。24歳で無職、人生設計や目標が無かった私に光が差し込んだ。これがプログレとの出会いである。
マイク・オールドフィールドをジャンル分けすると普通は[ギタリスト]である。もしくは[プログレッシヴロック]として扱われる。それなのにラジオの番組表で[シンセサイザー特集]という標記をしてくれた事からして奇跡に近い出来事である。マイク・オールドフィールド特集、ギタリスト特集、プログレ特集と紹介されていたら、そのラジオ放送を聴く事は絶対になかった。
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