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落ち着いた色合いの寝巻でも目立つ鴉の濡れ羽色。長く緩やかにカーブを描く眉の下には丸い目が二つ並ぶ。顔の真ん中にはちょこんとした可愛らしい鼻(子供っぽくて不満な)が乗っかっていた。
まだ膨らみきっていない瑞々しい唇を曲げつつ彼女は耳たぶを撫でる。
(あの人が居なければピアス開けるんだけどな……)
鳴り響くアラーム。美香は耳を撫でていた手を止め枕元のスマホへと近づく。時間が来たようだ。アプリのダウンロードサイトを開き画面を凝視する。
噂が正しければあと少しで出るはずだった。
切っ掛けは高校で聞いた噂。満月の夜、午前零時にしかダウンロード出来ないアプリの話。
そのアプリを手に入れた者は死神と会話ができる。
はじめに聞いた時は吹き出してしまった。今時死神?
作り話なのは分かってる、それでも。
限られた窓枠から見える星屑は代わり映えのない微かな明かりを灯す。あんなんじゃ漫画も読めない。科学のセンセイは一つ一つが違ってどうのこうのと言ってたっけ。
私にとっては同じだけど。
スマホから漏れ出る人工の光が彼女の瞳を輝かせた。スマホにはゼロが三つ。指を止め画面を穴が開くほど見つめる。変わったところはない。
まって、そもそもそのアプリの名前は。検索しないと出てこないんじゃ。もう十五分は見てる。セーブモードになったスマホの光は弱々しい。
もういいか。元々学校で話すときのネタくらいに思ってたし。
「え……?」
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