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動きはない、死神の対面にあった丸椅子を引っ張ると股がるように腰を下ろした。
「えーと、あーまぁ元気?」
「……オカゲサマでね、球体関節の調子もなかなかだよ」
人形のおどけた調子に思わず美香の喉がくすりと鳴った。
「なにそれ!ふふっ。てかさ病院にフランス人形とか怖すぎじゃない?」
死神は両腕を肩くらいに掲げた。この前見たサッカーの試合で選手が審判にやってたポーズに少し似てる。
「そりゃないだろう、そもそもこの姿は君達が怖がらないように……」
コミカルなポーズをとるフランス人形を前に美香からくすくすと笑い声が漏れ出てくる。彼女は椅子に座りなおすと体を前に傾けた。
――何時から死神になったの?
―――初めからさ、いつ生まれたかという質問なら……君よりずっと前からだね
――ここに住んでるの?
―――この辺じゃここで死ぬ人が一番多いからね
――殺してるわけじゃないの?
―――そういう仕事もある。でも、魂を導くのが主な仕事だよ
――私のスマホにあのアプリいれたのはあなた?
―――そうなるね、ただ君が望んでいなかったらここには来られなかったはずだよ
――へーじゃあさじゃあさ あっ
美香のポケットからスマホがこぼれ落ちる。小さな部屋に落下音が反響した。光を反射するいくつかの破片。カバーガラスだろうか。
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