捜索

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「しかし、もしそうだとして、なぜこうも見つからないのでしょうか。」 奏多は再び考え出した。  絵津子はそれを見ていた。 「!もしかしたら…。」 「何か分かったの?」 「絵津子さん。昔曽木発電所に行ったときのこと覚えてますか?」 「曽木発電所?」 「はい。僕と絵津子さんと優太君の3人で曽木発電所の跡地に写真を撮りに行ったとき、絵津子さんが足を滑らせて湖に落ちてしまったことがありましたよね?」 「うん…。」 「その時は優太君が必死になって助けてくれました。もし、優太君が絵津子さんと同じ状況になったとしたら…。」 「でも、あのときは浅瀬だったし…。私は泳ぎ苦手だったけど、優ちゃんは泳ぎ得意だったでしょ?」 「確かにそうです。ですがあのときは時期的に湖の水位は低かったですよね?だから優太君でも助けることが出来た。優太君が家を出たのは冬の時期です。その時には結構な水位になっていたと思います。」 「……。」 「…あくまでもこれは僕の推論です。確証があるわけでは…。」 「夏になるとね。良く2人であそこに遊びに行ってたんだ。何をするわけでもなくて、ただずっとお喋りしてたの。ほとんど優ちゃんが喋ってて、私はそれに頷いてるだけだったんだけどね。」 絵津子はそう言って笑った。 「絹枝おばさんが昔あそこで結婚のプロポーズされたんだって。『俺もいつかここで好きな人にプロポーズするんだ』って言ってたなぁ。」 そういう絵津子の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。 奏多はスッと立ち上がった。 「…今から行きましょう。」 「えっ?」 「曽木発電所にですよ。行けば何か分かるかもしれません。」 「でも、あんな広いとこでどうやって見つけるの?」 「それは…行ってから考えましょう。」 「……。」 「…雲行きが怪しくなってきました。雨が降ったら水位が上がって危険です。その前に…。」 そういう奏多の目は決意に満ちていた。 「…うん!」 絵津子はそう言って立ち上がった。 2人は曽木発電所に向かって走り出した。 果たして優太に会えるのだろうか? 空には暗雲が立ち込めていた。
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