押し上げた部長の高み

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社長の留守中に入った連絡事項などをまとめて帰社されたら報告、そして指示を仰ぐ。出張時の経費の領収書を預かり、計算して経理部へ報告。成程、資格取得で学んだ通りか。 主に連絡が入る固定先を覚えて、対処も頭に入れないと。 なるべく、報告は明確にして社長が指示を出しやすいように導くかな。 剛腕と聞いた社長、なかなか活発な行動を取られるから外出が多い。そのスケジュール管理も大変だけど遣り甲斐を日々、感じるようになってきた。卓屋部長が言うように面白いかもしれない。 履いていた靴も外回りの多い営業用ではなく、本革に替えた。着ていたスーツも動きやすさでは無くて、品のあるものに切り替えた。少しづつ、慣れていく実感がある。 「任せられそうで良かった。流石は卓屋部長の大事な元・部下ね」 大事? 竹内さん、今、なんて? 「元・部下はそうですが、大事にされたとか……」 「下鳥くん、気付かなかった? 卓屋部長に同行していながら、甘えていたんじゃない?」 そうでした。 「知らないかな。卓屋部長は本当は下鳥くんを出したくなかったみたい。だけど社長が下鳥くんが資格を持っている事をご存じで、先に卓屋部長とお話しされたの。上下関係を重んじる社風で卓屋部長も例外ではないけれど、珍しく渋っておられたわ。大事にされていたのね」 そんな経緯、聞いてない! 僕はてっきり、卓屋部長が推薦したとばかり。 「竹内さん、初耳です」 どうしよう。 あんなに駄々こねて困らせて。なのに僕をここへ導いてくれたなんて。 僕は何をしたら、卓屋部長に恩を返せるんだ。 「竹内さん、僕はどうしたら卓屋部長に」 「動揺したらいけないよ、下鳥くん。この会社の社長を補佐する仕事は、ひいては卓屋部長の支えにもなるんだから。大事にされた恩を、返せるんじゃないかな」
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