押し上げた部長の高み

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『甘えん坊だな、いつまでも。それではおまえを出した事に後悔してしまう』 そうだよな、後悔させてはいけない。支えると決めたんだ。 『まず、落ち着け。俺はもう下鳥を連れ戻す事は叶わないんだ。だが、おまえを導いた先も支える事は出来る。毎日、顔を見せる訳にはいかないが、社内の人間に変わりないから』 「はい、すみません、大丈夫です。業務の邪魔をして申し訳ございません」 『……無理させたか』 はい? 『一旦、切る。失礼します』 あ、切られた。捨てられた感が凄い。 やっぱり業務妨害してたんだ、申し訳ない。相手は部長だ、たとえ元・部下でも許されないよな、こんな私用電話みたいな事。 でも久しぶりに声が聞けたし。泣きそうだけど堪えよう。 はあ、後1時間もしないうちに社長が戻られる。 それまでに表情を立て直さないと。……目、赤くないよな? 竹内さんが在籍中は鏡を貸して貰えたが、自分で持ってくるようにしないとな。 スマホのメモに入れておくか。て、スマホは何処だ、カバンの中か? あー、カバンがロッカーか! もう頭の中も整理が追い付かない。やばい。頭抱えてどうしたら。 バターンと勢いよくドアが開いたので身震いした。 「失礼します!」 卓屋部長? 上着の裾を翻してどうしたんだ。 らしくないな、ノックもしないで先にドアを開けるなんて非常識。そんな人じゃないのに? 「社長は外出だろ? 下鳥、」 あれ? エレベーター使わずにもしかして階段駆け下りたんですか? 営業部は3階でここ1階。 息を切らして、どうしたんだろ。 うわ、しまった、この顔見せたら居たたまれない! 「顔、見せろ。俯くな」 卓屋部長、勘弁して下さい。 「折角来たのに」 ああ、そうだ。 げ。 ひいい、卓屋部長が屈んでる! 顔を覗き込まれた、やられた! 「……おまえ」 思い切り釣られた! 恥ずかしい。 でも卓屋部長、眉間に皺寄せてるの初見です。どうされたんだ? 「赤い目している秘書は機能しない。落ち着け。ここまで務めたんだ、下鳥なら出来るから。その目算がなければ俺は手放していない」
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