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「俺の人生でただ1つの悔やみが出来た。それに気づくのに数日かけた。おまえの存在は俺のなかで遥かに大きかった」
「あの、その、」
「高い場所へ導くのが上司の務めと思った。おまえにもそのほうがいいと判断した。上昇志向は持たなければならない。だが固持するべき大事な心を渡し忘れた」
何を言ってるのか。……しょ
え?
卓屋部長の鼻の先が当たる、いやそれじゃなくてキスされて吸われてるし?
は、と離れた唇が湿り気を帯びてるし。
卓屋部長の顔、高揚してるし。色気凄いし。高鳴るし!
「おまえが好きだ。そうでなければ半年も同行させていなかった。気付くのに相応の時間をかけてしまった」
えっ、僕ですか?
「だから離れていても下鳥が気がかりだった。泣いてないか。失敗してないか。誰かに怒られてへこんでいないか。そればかりだった」
「気掛かりなのは申し訳ない、」
「黙りなさい」
「ひっ」
「時間がない。社長が戻る前におまえに伝えた。俺はおまえの支えになる。分かるな?」
分かりましたけど、頷くばかりだけど。
卓屋部長。顔、すごい綺麗なんですけど。こうでしたっけ?! 色気ですか、やはり?
「おまえが俺を慕うのは理解している。通じているという事だ。自信を持て」
「は、はい」
「会社を出たら幾らでもまた駄々こねていい。我儘を言え。聞いてやるから全部」
「そんな事、営業回りが、」
「話したはずだ。俺は内勤に専念する。だから異常事態が発生しない限り下鳥に合わせてやる」
そんな贅沢、許される、
ぎっ、抱きしめられた、こんな有り余る幸せ、いいんですか?
「俺に会えると思って業務に励め。それなら出来るな? 意外と近い所におまえが辛い時に逃げ込める場所があるんだ、分かったか?」
「了解しました」
有り難すぎていいのかな。あなたには感謝しかありません。ここが1番高い場所でした。
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