押し上げた部長の高み

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卓屋部長は『後悔していない』と自分の生き方を話してくれたな。この先、やらずに悔いが残るだろうか。分からないけど、僕は1つ言える。卓屋部長みたいな生き方がしたい。 僕が断れば卓屋部長は残念に思うだろう。 これだけ良くしてくれた上司に恥はかかせられない。同行出来ないのは寂しいけど、営業部に残っても同じだ。なら、折角差し示してくれた先に進むべきだ。 「やります。勉強し直して、遂行します」 「そうか。分かった。寂しくなるな」 はあ? 落とさないで! あなた何言ってるんですか? 「頑張れ。俺は顔を出すから、何か差し入れしようか」 また子供扱いだ。 「別に。でも困ったときに卓屋部長の顔が見れたら励みになります」 あ。 「俺でいいなら力になるし。でも、側にはいないからなあ」 どん、と落とすな、この人。 「慣れないうちは寂しいかもしれないが、その辛さも時間の経過で越えられる」 簡単に仰る。 「気を紛らわせる方法を見つけないと。そうだな、」 「……ありがちに、辛い時は空でも仰げと、言うんですか?」 「下鳥。空には何もないよ」 はい? 「空は、魂をなくしたら行く先。高くて暗いところ」 え。何を言い出したの。 「おまえが行くのは高くて誇れる場所」 何言ってるの。 「こんな空気の悪い、しかも蛍光灯が絶えない街に浮かぶ夜空には星が見えないだろ。見えないものを探して気が紛れるのか? 辛くなるだけじゃないかな。探し物は手が届く辺りにあるんじゃないのか」 手が届く辺りにはあなたしかいませんが。 「おまえには目指すものはないのか。追いかけるものはないか? 俺を口惜しい気持ちにさせるなよ?」
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