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安らかなる濃紺の世界
この世界はともかくあおかった。
天上には水のカーテンがひかれ、その上にある空はますます青く揺らいで降る光は柔らかく、雨が降れば空に包まれる錯覚を覚えた。
海は絵画のような碧色。中国でこんな景色があったと遠い世界を思い出す。
そしてわたしの前には紺色の湖、わたしはこの湖畔で管理人をしている。
この湖は安楽死施設だ。どうも天然ものらしい。魔法やそれに準ずる法則のある世界にはこれまでにも転生したがこのような利用のされ方を見たのは初めてだ。
この湖に身投げをすると楽に死ねるらしい。証明は出来ないが、確かにりようしゃは皆一様にもがくこともなく沈んでいく。ぶくぶくと吐き出される空気はこの湖では夜空の星のように輝き、この輝きが消えたときわたしは手を合わせる。
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