幸せのあおいさかな

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「隊長ーー!!青が逃げました・・・・」 「えー困るよ・・・どうすんの・・・あと3時間で出動だよ!」 ある市、ある街の商店街。 駅にほど近く、大きな病院も近くにあり、かつては賑わったこの商店街も、道路事情の変化、インターネットの普及、近隣に出来た大型複合商業施設など、様々な理由でもれなくシャッター商店街となった。 そのうらびれたシャッター商店街の、ど真ん中に位置する、まあまあ大きな八百屋。 『やおや岡吉』 地元に愛され88年。雨の日も、雪の日も、不況の時も、野菜不足の時も、地元の人に、安心安全、安くておいしい食品を提供し続けてきたが、訪れる客の激減に戦々恐々の日々。 何か打つ手はないかと考え出されたアイデアが、『スーパー戦隊やおやー』だった。 何のことはない、各売り場責任者が戦隊ヒーローのぴちぴちスーツを着て、踊って歌ってMCして、時には陳列、時にはレジを、タイムセールの卵1パック88円の手渡しは握手会も兼ねるなど、いつもと変わらない仕事に、あってもなくてもいいようなサービスをくっつけただけ。 いささか古臭い印象もあるが、本人たちは大まじめ。生きるか死ぬかの大戦(おおいくさ)なのだ。 奇しくも、本日は敵対する大型複合商業施設の大バーゲンの日。それに対抗しての『やおや岡吉』決死の大売り出しの日。
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