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「店長!干物類は冷蔵庫から出して並べました。開いた刺身のケースには缶詰でも並べましょうか。」
「缶づめか・・・」
ちょっと弱気なこの人は店長兼、社長の岡さん、55歳。最近先代から社長の座を譲り受けたばかり。気の弱いところもあるが、人望もあるし仕事もできる。
ただ、先代、先々代が偉大過ぎるのと、『やおや岡吉』の現況のせいで、まだちょっと社長としての自信が持てない。
「だったら、お魚チップスとかの菓子類も・・・」
「あ、つまみは?するめもよくね。」
この二人は
緑・・・菓子・飲料水担当 堀田君 最近結婚したばかりの32歳。
彼の両親は岡吉からさほど遠くないところで工場を営んでいた。吹けば飛ぶような零細企業だったが、真面目にコツコツと『いい品』を作っていた。
堀田君は、都会の大学に行き、そのまま就職していたのだが、26歳の時、突然、父親が急死。
呼び戻されることになる。跡継ぎといわれても、経営も生産も、機械の使い方すらしらない堀田君は、あれよあれよという間に顧客をうしない、工場は倒産。借金を抱えて路頭に迷っていたときに救いの手を差し伸べたのがここ、『やおや岡吉』の先代社長。借金を立て替えてくれただけでなく、店で働かせて貰い、嫁はここでバイトしていた現社長の娘を貰った。素晴らしい『わらしべ』っぷりだ。
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