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きれいな手だと思った。そのきれいな手で、ジョンさんは、薄緑色の表紙のスケッチブックから一枚切り離すと、電話番号と名前を書いた。
「川村?」
「はい、わたし、そこで農作業の手伝いをしながら、絵、描いています。ちょっと見てもらってもいいですか?」
ジョンさんは、スケッチブックをめくり、絵を見せてくれた。小さい時から見慣れた曽木の滝が高台からのアングルで描かれていた。上手いと思った。どれも迫力があった。
「祭りが終わったら、もっと描きます。ダムにも行ってみたい。」
「他にも絵はありますか?」
「はい。置いていいなら、明日、もっと持ってきます。」
「これ、預かってもいいですか?お父さんに聞いてみないといけないので。」
ジョンさんは頷いて、スケッチブックを絵里香に渡した。
「よろしくお願いいたします。」
お辞儀をする姿が優雅だった。絵里香は胸がドキドキするのを感じた。スニーカーを履いていた。大学生くらいの年齢だろうか。素敵だと思った。
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