1人が本棚に入れています
本棚に追加
午前中はジョンさん以外、来客は無く、お昼時になった。炊き立てのご飯を茶碗によそって食卓に運ぶ。除草作業を終えて、シャワーを浴びて出てきた父が聞いた。
「あぶらみそ、まだあったよね?」
「冷蔵庫に無い?」母が奥から返事をした。
冷蔵庫に向かう父の後ろから、絵里香は声をかけた。
「お父さぁ、今日、ジョン・ウォーカーっちゅう外国人が来て、明日のパレードで、うちの店の前に絵を置いてもよかかって。」
「何、外国人が来たって?絵里ちゃん、英語喋れたか?」父がいたずらっぽい光を湛えて聞いた。
「別に英語とは限らんし。」
「何の絵を描く人かな?」
先ほど預かったスケッチブックを開いて、父に渡した。パラパラとめくっていた父は感心したようにうなった。
「へえ、たいした腕だなあ。明日来うんだね。いいよ。」
絵里は思わず、心の中で「やったー。」と叫んだ。店の方へ行くと、電話の受話器を握った。番号を押す手が少し震えた。つながると、おそるおそる店の名前を言ってから聞いた。
「塚田薬局のものですが、あのー、ジョンさん、いますか?」
電話の向こうから、聞き取りにくいおじいさんの声が聞こえてきた。ひとしきり、受話器の向こうで会話があったらしく、雑音を挟んで、ジョンさんが出た。
最初のコメントを投稿しよう!