アオイヒカリ

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そうしてるうちにも 先輩の体はどんどん薄くなってゆく。 体の半分が薄く透き通っている。 だからと言って私には どうすることも出来ないし 先輩も何かを望んでいる訳じゃない。 自分の運命を静かに穏やかに 今、漸く受け入れようとしている。 後少しで消えてしまいそうな時、 先輩がーーー 「そう言えばさ、お前、バレーボールもうやんないの?俺、お前のプレーしてるところ好きだったよ。思いきりがよくて、格好よかった。」 先輩、ズルい。 現役の時にそんなこと 一度も言われたことないのに。 今になって それも このタイミングで言うなんて… ズルいよ… 「おっ、いよいよだな。」 私が何も返せないでいる間に 先輩の体はほとんど青い光になっていた。 言わなきゃ。 今、伝えなきゃ後悔する。 「先輩っ、わ、私、先輩の事が好きでしたっ!」 最後の最後に伝えた私の言葉が 光となって消えていく先輩に 届いたのかどうかは 分からないけれど それでも今、伝えなきゃって思ったから。 今じゃないと駄目だって思ったから。 先輩が私に思いを伝えてくれたように 私も今だからこそ素直になりたかった。 決して重なり合うことのなかった それぞれの思いを この一瞬だけでも繋げたかった。 例え、先のない思いであったとしても。 そしてーーー とうとう私の目の前から先輩は 青い光ごと消えてしまった。 ただ、その瞬間 ーーーサンキュッ って先輩の声が聞こえた気がした。 今まで目の前にいた先輩は もうどこにもいなかった。 けれど不思議と私の唇だけには 先輩の感触が残っていた。 そぉっと、指で唇に 触れてみる。 確かにそこには ついさっき触れた先輩の熱が ハッキリと残っていた。
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