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キシが女の人と入ってきた。 その日は、業務部の先輩に誘われて、社員食堂に来ていた。水曜日は日替わり定食が鶏の唐揚げで、いつもより混雑する。 キシと一緒の女の人が、僕の隣にいる大橋さんに手を振った。大橋さんが、 「おー」 とコップを置いて、手を振り返した。 それで、キシが僕に気づいて、今まで見たことのない不思議な表情になった。僕もあんな顔をしているのだろうか。 「知ってたっけ、彼女。営業の佐倉さん」 と大橋さんが言う。 「お顔とお名前が一致していませんでした。電話で何度か」 「だよな、俺、同期なんだよ」 社内でキシと会う頻度は、それほど高くなかった。営業企画部は同じフロアだが、ロビーを挟んだ別のエリアにあり、そもそも彼は営業なので、あまり社内にいない。 社員食堂で出くわしたことは、これまで一度もなかった。 四人掛けのテーブルの向かい側にいた二人が席を立ち、いやな予感が当たって、さっきの佐倉さんが、 「ここ、いい?」 と大橋さんの前にやってきた。 「もちろん、どうぞ」 「ありがとう、今日、混んでますよね」 佐倉さんは僕に言いながら、テーブルにトレイを置き、椅子を引いた。 すぐにキシが現れて、トレイを僕の向かいに置き、     
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