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と答えてから、佐倉さんは、
「同期の女子とかにもモテるでしょ、この人」
と僕の方を向いて言う。
僕は、何の味もしない唐揚げを呑み込み、
「ああ、人気あると思います」
と自動的に答えた。
「やっぱそうだよね、でも彼女いるんだよね、岸君は」
佐倉さんがそう言うと、大橋さんが、
「へえ、そうなの!」
と嬉しそうに話に入っていく。
僕はつい、キシを見た。キシは一瞬、僕を睨んだ。僕を睨むなよ。
佐倉さんが目ざとくそれを見ていて、
「上野さんは、何か知ってるのー?」
と言う。全く、なんでこんなことになったかな。
「いいえ、何も。岸、全然話してくれないので」
「ねえ、秘密主義だよね。まあ話す義理もないし、いいけどさ」
佐倉さんはそこで話を止めてくれそうだったが、大橋さんが、
「なに、そしたら結婚とか考えてるの?」
と聞いた。キシはちょっと笑って、
「いや、それはまだ」
と答えた。
その途端、まるで突然頭を叩かれたように、体がぐらりと揺れる感覚があったが、外から見ても何も起きていなかったはずだ。
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