第1章

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 「いや、言うたら誤解されるか知れへんけど、えりすちゃん、男から見たら、なんやすごいのん出てる。せやさかい、熊谷とかほかの当番とかが……」  っていうので、あたしはびっくりする。  熊谷先生とかほかの当番の人たちが「これはないしょだよ、誰にも言ったらダメだよ」って、はあはあいいながらあたしにいろいろしていることを、油小路さんが知ってるからだ。  大きい体を丸めて、油小路さんはまゆ毛をよせる。それがあんまり悲しそうでかわいらしいので、あたしはこの人をだきしめて、じゃがいもみたいな顔や首にいっぱいキスしたいって思う。けど、ねぶくろの中にいるからできない。だから、あたしは、  「油小路さんも、したい?」  って聞く。そしたら、油小路さんはもっと悲しそうな目であたしを見て、  「かんにんな」  っていう。せ中がひやっとして、あたしはどこかの穴に入りたくなる。もちろん入れないので、小さい声で、  「ごめん」  っていう。油小路さんはおでこのばんそうこうをぽりぽりかいて、  「いいや、えりすちゃんはなんも悪ない。けど、ここにいたら、えりすちゃん、ほんまもんの病気になってまう。せやのに僕は何にもできひん……かんにん」  っていう。あたしはほんとにこまって、ねぶくろの中でもぞもぞする。  「なんで油小路さんがあやまるの。ぜんぜん平気だよ、だってあたしは生まれついてのインバイなんだもん」  「そんなん言うたらあかん」  油小路さんはねぶくろをひっぱって、ベッドのまん中になおす。ちょっとらんぼうなひっぱり方だ。  この人はおこるほうだ、ってあたしは思う。  あるしゅるいの男の人は、あたしのこと「インバイ」ってよぶ。だけど、べつのしゅるいの男の人は、あたしがあたしのこと「インバイ」っていうとおこる。  あたしはまた、  「ごめん」  っていってもぞもぞする。油小路さんはねぶくろのベルトのあたりをいじりながら、  「僕なあ、女の子をそういう目で見られへんねん」  っていう。あたしはもぞもぞをやめる。  油小路さんは大きなおしりをちょこんとベッドのはしっこにひっかける。それから話しだす。
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