第1章

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 っていうと、にこっとする。  「ほな、おやすみ」  「おやすみなさい」  ぱたんとドアがしまって、かぎのかかる音がする。  朝ごはんのあと、あたしたちは中にわに出る。先に下りた油小路さんが、  「あ」  っていって立ちどまる。  桜の木のそばに人が立っている。しゅっとしたスーツとめがねの、まじめなサラリーマンふうの男の人だ。  油小路さんはしずかな声で、  「えりすちゃん、ここにいてて」  っていって、戸口のところにあたしをおいて、ひとりで男の人のところへ歩いていく。  「ここは関係者以外、立ち入り禁止ですよ」  男の人はむねからぶら下げたカードを見せるけど、油小路さんは首を横にふる。  「入館証があっても、ここはあきません。事務室へご案内しますし」  男の人はちょっと笑って、油小路さんのかたの向こうからまっすぐあたしを見る。  「おい」  大きい声を出して油小路さんがつかまえようとするけど、ひょいっと体をひねってよけて、もうあたしの目の前にいる。  いきなり土にひざをついて、あたしの足の甲にくちびるをあてる。頭を上げて、  「来たよ」 って、いたずらっ子みたいに口のはしを曲げる。  あんまりびっくりしたせいで、あたしも油小路さんもとまってしまう。けど、さすがに油小路さんはすぐ気がついて、  「おいっ」  大きい声と手でその人のかたをつかむ。その人はあたしの足を両手でかかえてしがみつく。  あたしは油小路さんの白いそでをつかんで、  「らんぼうしないで、おねがい」  ってたのむ。ぎゅうぎゅうひっぱりながら油小路さんが、  「知り合い?」  って聞くので、あたしはこくこくうなずく。  「……友だち、あたしの友だちなの」  油小路さんが手をはなすと、あたしの友だちもしがみつく手をはなす。そっと頭を横向きにして、あたしのひざにのせる。  「どうやったら、こんなかっこいいマシンが手に入れられるの、ソーニャ」  手をのばしてあたしの足と車いすをなでる。砂色のかみを指でとかしてあげて、あたしはなんでか泣きそうだ。  油小路さんが口をひらきかけるけど、あたしが先にいう。  「ちょっとふらふらするだけなの。ころんだりしないためにのってるの。心配しないで、鴎さん」  「へえ」  鴎さんは立ち上がる。
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