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「ごめんね、油小路さん。あの人少し頭がおかしいの……」
鴎さんのせ中がかるくこける。
「……でも、大事な大事な友だちなの。ふたりでお話しさせてくれる?」
心配そうな顔の油小路さんはあたしを見て、
「そんな頭おかしいのん、えりすちゃんと二人にしとけんし」
っていう。
あたしは笑って、
「だいじょうぶ。この人は小鳥のひなより弱いから」
っていう。もう一度、鴎さんのせ中がこける。
油小路さんはもう一度目をゆらし、それから急に上のほうを見て、
「せや、僕、今週号のジャンプまだ買うてない。売店行ってこよ」
っていう。
鴎さんはくるっとふりむいて、
「あ、ならあとで僕にも読ませて」
っていう。油小路さんは、鴎さんを上から下までじろじろ見て、
「どんな手使うて入ったか知らんけど、僕がおらんかったら、自分、ここから無事に出られへんし」
っていう。鴎さんはまたワルモノの顔で笑う。
「へえ、ならあんた、僕を無事に出してくれるんだ。そりゃありがたいお申し出だ、ウドの大木くん。お礼に何して欲しい? たいがいのことはしたげるよ」
っていって、口のまわりをなめる。油小路さんは顔をそむける。
「すぐ戻るし」
急いでドアをあけて、たてものの中に入る。
「おおきに」
って、鴎さんはお礼をいう。かちゃんとかぎのまわる音がする。
鴎さんはほう、と息をついて、
「やれやれ、やっと二人きりだね」
って、あたしに向く。
「で、調子はどうなの、ソーニャ」
また土にひざをついて、両手と頭をあたしのひざにおく。
「ああ、そうだよ、君の言うとおり、僕は頭がおかしくて弱いさ。だから、こんなマネができる。君に会いに来るような恥知らずなマネがね。そのうえ、僕はちっとも謝らないつもりだ。君に許しを乞うようなマネだけはすまい、って心に決めてんだ」
あたしは片手で鴎さんの手をぎゅっとにぎり、もう片っぽで砂色のかみをなでる。
「鴎さん、あたしのことおこってるんだね」
頭を上げて、鴎さんはにっと歯を見せる。
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