今宵、新月の夜。

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………リー、リー、 って、虫の鳴き声と 時々強い風が吹いて 木々がざわめく音だけの 真っ暗な空間に漂う、 蛍の光り。 昼間は茹だるように 暑いのに、 今は夜風が涼しくて、 少し肌が冷える感じ。 「明日、休日だろ。 何か予定…あるか?」 「!!」 また頭上から 黒宮さんの言葉が 降ってきて、 辺りは変わらず真っ暗で 顔は見えないけど、 黒宮さんの方を再び 見上げた。 「明日は、特にっ…」 「じゃあ、来るか? こないだ言ってた 旅館と、 温泉に案内する。」 「…うんっ!!」 おおっ! 覚えててくれたのかっ つい、返事した声が 張り切ってしまってっ …真っ暗だけど、 少しオレの方を見下ろして きた黒宮さんの表情が、 僅かに笑ってくれた ような気がした。 「…"アイツラ"が ちょうど、 お前の歓迎会的な ことをしたいって 話してたからな。」 ……!! 「あの二人だよね!? 盛り上がりそうだっ… ………スねっ!!」 ヤッバイ、ヤバイ。 また敬語抜けそうに なってたしっ 「……別にいーぞ? フツーに話しても。」 「!!?!…そんなっ 出来ないスよっ!!」 いやいやいやいやっ 無理無理無理無理っ それはさすがに 恐れ多いっス!! 黒宮さんっ ……………、あれ? 黒宮…さん? なん か?黙っちゃったし。 でも今、この辺、 マジで外灯も無くて 空は晴れてるけど、 月も出てないから ガチ真っっ暗でっ… そんな黒宮さんの顔色が 伺えないもんだから、 なんか次に話す言葉が 選べなくて… 少しだけ会話が 止まってしまって、 ちょっと、モヤッとした。
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