64人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
「…春兄さま?」
ジト目で恨めしそうに睨んでしまうのも致し方ないことだと思う。
「あ…いやあ、すまん」
せめて事前に知らせてくれれば、とついつい恨み言を投げかけそうになった気配を察したのか、顔の前に大きな手をかざす。
「荷物持ちでもいいから、ついて来たいって押し切られてしまってな。前もって知らせられれば良かったんだが…。すまなかった」
ちょっぴり、しゅんとした顔をして謝られると、元妹としては許すしかない。末っ子というものは結局、兄には逆らえないのだろう、一生。
「…なんと言うかな、最近アレも元気がないみたいでな。お前たちの顔でも見れば気晴らしにでもなるかと思って、ついつい、な」
そして、兄というものは結局、弟たちを見捨てられないのだろう、一生。
最初のコメントを投稿しよう!