夕暮れの空を眺めて待つものは

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「もういいですよ、そんなに謝らないでも」 別に春兄さまを苛めるつもりはない。ついてきたのは月兄さまだし。 「久し振りに兄弟が揃って、賑やかでいいじゃないですか。料理とお酒が足りるなら問題なしです」 「それなら気にしないでいい。これから俺もちょっと作る気でいるし。酒も色々持ってきたぞ」 いそいそとカバンから渋い黒の使い込まれたエプロンを取り出して、ニコニコする熊さんを、誰がこれ以上責められるだろう。気持ちを切り替えて、楽しむしかない。 「ああ、これなら雪兄さまも呼べばよかったかな?」 せっかくなら勢揃いしたい、と漏らせば春兄さまは何とも複雑な顔をして言った。 「雪なら今頃、空の上だな。仕事で海外に向かっている途中だと思うが、万が一、美澄が来て欲しいなんて言おうものなら予定全部キャンセルして引き返しかねないからな…。周りの人間のためにも、すまんが自重してくれ」 真顔で頼まれた。
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