夕暮れの空を眺めて待つものは

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カウンターに置き去りにしていた携帯電話が、ピロンと音を立てた。 ディスプレイに映るのは、ちょっとファニーな黄色いクマのアニメーション。蜂蜜をツボごと抱えて舐めとっている、ちょっとトボけたオジサン風なのがいい味を出している。 文章は簡潔極まりない。 『もうすぐ着く』 そして、投げキッスをする黄色いクマが再び現れる。 メッセージの送り主を思い浮かべて、苦笑が漏れた。 …いい歳をした成人男性が、無類の可愛いもの好きって。 これが噂のギャップ萌えというやつか。 まあ、可愛いものに罪はない。 可愛いものが好きなのも、罪ではない。 それよりも、彼に知らせなくちゃ。 急いで書斎へと向かう。パタパタと足跡の響く廊下は、電気のスイッチを入れないと暗すぎて、お化け屋敷みたいだ。足早に通り過ぎるに限る。
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