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---コンコン。
控えめにノックする。返事はない。
そっと年代物の木の扉を開く。静かにと気をつけていても、ギシギシと軋む音は止められない。
これまた年代物の磨き込まれた大きな書き物机には不釣り合いな、スタイリッシュな白銀色のモニターの向こうで、彼はどこぞの誰かと会話していた。
母国語のように滑らかに流れ出る異国の言葉の響きにしばし耳を傾ける。いや、無口な彼にしてみれば母国語よりも余程流暢かつ饒舌に語っているに違いない。
視線だけがこちらに送られる。
数度瞬きをしただけで、意思疎通が叶う。
本家で”兄妹”だった頃とは明らかに異なる距離感に、時々はっとさせられる。
どんなに言葉と気持ちを尽くしても通じなかった心が、今は手に取るように解る。
その不思議に、頬が緩むのが自分でも分かる。
軽く手を振って、静かに扉を閉めた。
さてさて、戦闘の準備は抜かりなく出来ているか、確かめにいかねば。
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