夕暮れの空を眺めて待つものは

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今夜はもともと、春兄さまがお料理を持って遊びにきてくれる予定だったのだ。 ついでに料理自慢の兄さまのレシピも習ってしまおう、という北白川真春主催お料理教室 兼 試食会 を開催する、前々からの予定でした。でしたが、何故か月兄さまもくっついてきています。 呼ばれてもないのに相手の家を(おとな)うだなんてマナー違反だわ、と僕の中の美澄の名残がぷんすかしている。 春兄さまと月兄さまは、寄ると触ると言い合いばかりして、仲が悪いのではないのだけれど、煩い上に面倒事を起こしたがる組み合わせなので、兄弟の中でも混ぜるな危険、一緒にしてはいけない二人なのである。 だのに、春兄さまの後ろからひょっこりと顔を出した月兄さまは、悪びれもせず高級ワインを差し出すと、さっさとリビングの方へ歩いていってしまった。
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