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第二章 プラタナスの街
「お掃除してもお掃除してもちっとも綺麗にならず、じっと手を見る……」
「石川啄木の『一握の砂』かい。小花ちゃんは大したもんだね」
「そう言う吉田さんの方が博学ですわ」
夏山ビルの清掃。小花は吉田と一緒に廊下の掃除をしていた。掃除機をかける吉田の後ろを小花は洗剤のついたスポンジで擦っていた。
「これは靴の跡ですけど。汚れに見えるのよね」
「床の色が悪いんだよ。目立つ色だし」
「建設会社の人は掃除をする人の気持ちをわかっていませんわ!」
プンスカ怒り出した小花の背後から総務部長がやってきた。
「洗剤を無駄にしないように」
「……はい」
「それに小花さん。玄関が汚れていましたよ。綺麗にしておいてください」
「え?さっき綺麗にしたばっかりなのに」
「ちょっと。総務部長さん」
ここで吉田が彼に向き合った。
「何か」
「私達は掃除をしたんだよ。その後に汚れたの!」
「左様ですか。しかしながら」
常に綺麗にしておいて欲しいと総務部長は言い放った。
「玄関ですから。会社の顔なので」
「く!」
「……わかりました。やっておきますよ」
屈辱の二人が玄関に行くと、ちょっと砂ぽいだけだった。
「これだけですか」
「あいつの靴じゃないのかい」
「許すまじ……」
fin私は祖母の言いつけで体育の日にこたつを出すことに決めております。
これから寒くなるのでお仕事が辛いですね。無理しないでやりましょうね。
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