1話 心の汚れを綺麗にします
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1話 心の汚れを綺麗にします

「ダメです!!」 夕刻。 会社の屋上のフェンスの前でぼうとしていた風間諒かざまりょうの背後から女性が彼をギュウと抱きしめた。 バランスを崩しそうになった彼がそっと振り向くと、この南風の中、必死に自分を抱きしめる清掃員の作業着姿の女の子がいた。 「……何してんの?」 「おねがい、死なないで……」 「は?俺が?違うよ!あの、ちょっと離して。この方が危ないよ」 札幌駅東方面にある5階建の白いぞうきんがたなびく屋上。 6月の西空に夕日が沈む中、風間は彼女に抱きしめられたまま後ずさりした。 「え?違うんですか?」 冷静な彼の言葉にようやく手を緩めた彼女は、そっと不安そうな顔を上げた。 「そうか、自殺かと思ったの?確かに考え事していたけどさ」 すると彼女はほっと溜息を付き、胸を手で押さえた。 「良かった……。あの、ここではなんですので、下の階に行きましょう。私、お話しを伺いますから」 「え?いやそんな事」 「ほら。早く!」 否応なしに彼女に腕を取られた彼は、彼女が開けた重い鉄のドアに進み、下へ続く階段を彼女に手を引かれて降りた。 やがて5階の廊下に進んだ彼女は給湯室横の関係者以外立ち入り禁止のドアを開けた。 「どうぞ、こちらへ」
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